バンクーバーでのセラピスト体験:ワーキングホリデーで出会った特別な瞬間
- はり香 銀座
- 3月27日
- 読了時間: 4分

【1】バンクーバーでのセラピスト生活の始まり
10年前、ワーキングホリデーで1年間カナダのバンクーバーで働いていました。リフレクソロジーとチェアマッサージ(※特別に設計されたマッサージチェアに座った状態で行うマッサージ療法)のお店でした。
お店は大きなショッピングモールの中にあり、ノースバンクーバーに住んでいた私は、バスを乗り継ぐか、30分川沿いを歩くかの2択で通勤していました。行きは下りだったので、よく川沿いの小道を歩いて出勤していたことを思い出します。
大自然と都会の距離が近く、本当に素晴らしい街でした。
日本でセラピストの経験はあったものの、まだ1年足らずの初心者で、チェアマッサージは初めての挑戦でした。お店のオーナーはシンガポール出身で、面接のとき、私が緊張しないよう気遣ってくれました。拙い英語でも採用されたのは、日本人だったからかもしれません。先輩たちのおかげで、日本人セラピストは信頼されていたのです。私も「日本人代表」として、しっかり頑張らなければと思いました。
同僚は10人ほど。フィリピン、中国、台湾、韓国、ドイツ、アメリカ、カナダ出身の人々と一緒に働くのは初めての経験でした。みんな親切で感情表現が豊か。仕事中に爆笑したり、時には怒ったりと、仕切りのない店内は、お客様も含めて常に和気あいあいとした活気に溢れていました。
【2】忘れられない2人のお客様
特に印象に残っているお客様が2人います。研修が終わって初めて担当した女性と、リフレクソロジーを受けに来たご高齢の男性です。
初めての施術、温かい手のぬくもり
カナダで初めて施術したお客様は50代くらいの女性で、チェアマッサージを受けられました。私は緊張で手が冷たくなり、震えそうになりながらも、一生懸命丁寧に施術しました。施術後、顔を上げた女性が満足そうな表情を浮かべていたので、その表情に心から安心しました。優しい笑顔でたくさん褒めてくれましたが、英語の表現は覚えていません。ただ、温かい手で私の手を包み込みながら、チップを渡してくれたことは今でも鮮明に覚えています。それがカナダでのセラピストとしての最初の経験でした。日本にもチップ文化があったらいいなと思いましたが、その後、チップの額を期待してしまう自分が現れて困りました。
90歳のご高齢の男性、歴史を刻んだ足に触れて
もう一人、忘れられないのはリフレクソロジーを受けに来たご高齢の男性です。90歳前後に見える、背が高く、足の大きな方でした。娘さんが買い物をしている間、マッサージを受けて時間を過ごしてもらう形で、初めての来店だったようです。
リフレクソロジーの手順として、まずフットバスに足を浸してもらい、スクラブで角質を柔らかくしてから施術を行います。彼の足はとても大きく、フットバスは窮屈そうでしたが、お湯の温かさを感じると頬がほころぶ様子が見られました。ご高齢のため、足先までケアが行き届いていない部分もありましたが、スクラブで優しく綺麗にし、「長年頑張ってきた足を労わる気持ち」で施術をしました。私は、人の身体に刻まれたその人の歴史に触れると、なんとも言えない感慨深い気持ちになります。
彼とはほとんど会話をしませんでしたが、施術の強さを確認すると、うんうんと頷いてくれたのを覚えています。施術が終わると、ご高齢の男性の目がキラキラと輝き、まるで孫を見るような温かい眼差しで微笑みかけてくれました。私はなんとなく差し出された手を握り、目と目で通じ合う幸せな瞬間を味わいました。
【3】心に刻まれたまなざしとこれからの想い
残念ながら、その後彼と再び会うことはありませんでした。ワーキングホリデー期間が終わる少し前の出来事だったため、帰国するまでの間に再訪する機会がなかったのです。でも、10年経った今でも、彼の優しい眼差しは心に残っています。
こうした経験の積み重ねが、今の私の自信と支えになっています。
これから「はり香」に来てくださる旅行者の方々とも、一期一会の出会いになるかもしれません。願わくば、そのひとときが、旅の忘れられない思い出の一つになれば嬉しいです。
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